所長あいさつ

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 気象研究所は、気象業務に関する技術の改善・高度化のための研究・開発を担う気象庁付属の研究機関です。


 近年は、平成30年7月豪雨、平成30年台風第21号、令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風などにより、暴風・洪水・土砂・高波・高潮などの大きな気象災害が発生しています。また、平成30年夏は、全国的に高温となり「災害級の暑さ」とも言われました。加えて、平成30年6月の大阪北部の地震、平成30年北海道胆振中部地震や桜島、阿蘇山、本白根山、新燃岳、口永良部島の噴火など地震、火山活動も活発です。このように災害を引き起こす様々な激しい自然現象が頻繁に発生している状況で、国民の気象庁に対する期待はますます高まってきており、これに応えていくためには、地球科学分野の専門家集団として、気象研究所が国内外の英知を集約しつつ、気象業務を技術的に支えるための最先端の研究・開発を担う必要があります。


 これまでも当所では、
観測・予測に関する基盤的な技術開発、
大規模な自然災害を引き起こす集中豪雨・台風・地震・火山噴火等の発生の仕組みの解明、
気象庁が発表する各種情報の改善に資する研究、
地球規模の気候変動の予測、地球環境問題の解決策に関する研究など、
わが国の気象業務を支える科学技術の研究・開発を進めてきました。その成果、知見は、天気予報や地震活動・火山活動の監視技術などの改善・高度化のみならず、広く国内外で活用されています。


 このような状況のなか、平成30年8月には、交通政策審議会気象分科会から「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」が提言されました。本提言では、気象に関する技術開発について、世界の研究コミュニティと連携しつつ日本として高い技術水準を達成するべきことが示されました。気象庁では、平成30年10月に、気象分科会の提言で示された気象・気候分野に関する技術開発を推進していくための「2030年に向けた数値予報技術開発重点計画」を策定しました。また、平成30年12月には気候変動適応法が施行され、それぞれの地域・分野で気候変動適応策を推進することとなりました。それらを確実に実行するためにはきめ細かい地球温暖化予測が必要です。地震火山分野では、南海トラフ地震への防災対策について、これまでの地震予知体制からの転換が図られているほか、近年の火山噴火災害や火山活動の活発化を受けて文部科学省による次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトが進められています。


 一方、科学技術を取り巻く環境は、ビッグデータを創出する新たな観測手段の出現と計算科学の進展、人工知能(AI)技術の進展に伴うデータ利用に関する応用分野が急速に拡大しています。気象業務においても、このように急激に変化する環境への速やかな対応が求められています。


 このような状況を踏まえ、気象研究所は平成31年4月、63年ぶりとなる大幅な組織改編を行うとともに、9課題にわたる新たな5か年の中期研究計画をスタートさせました。


 気象研究所は、地球科学分野におけるわが国の総合的専門家集団として、高度かつ最先端の研究を推進し、その成果を気象庁が発表する様々な情報の高度化・精度向上に反映させることにより、自然災害の軽減に貢献できるよう、また、気候変動等わたしたちの生活を取り巻く環境に影響を及ぼす自然現象の理解の増進や適応策の検討に貢献できるよう、国内外の研究機関と連携し、一層の研究開発に取り組んでまいります。


 今後とも、気象研究所へのご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。


気象研究所長 土井 恵治